桧材。縦20.3cm、横15.0cm。出目(でめ)満照(みつてる)作。胡粉(ごふん)地に黄土彩色。眉を垂れ、眉間の八字型皺を茗荷風目の上瞼に連続させ、頬骨を突起させ細く鋭く彫り、目に細い金輪をはめた相貌は特色がある。髪を毛描きし、鼻髭・唇下髭・顎鬚を黒い植毛にしてある。口を大きくあけ上下歯列を見せる。逸品である。裏に黒漆を塗り、鼻柱のところに縦に細い鉋目を十本ほど入れ、鼻穴のあたりに三本細い鉋目を入れている。
　出目満照作の茗荷(みょうが)悪(あく)尉(じょう)面は希少であり、岐阜県洲原神社所蔵のものが知られるが、これより造形を一歩、より簡素化に進めたものである。洲原神社蔵の悪尉面は、量感と彫りの深い彫刻技術による造形解釈がその造形の主をなしているのに対し、舟津神社蔵の悪尉面は、鼻の下から額にかけての彫りが浅く仕上られており、様式化された目・鼻・口を前方に押し出す彫刻技術がみられ、それらの箇所を際立たせるような造形方法を用いている。

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